毎月1日になると
86歳の女性(以下いしさんとします)
市内の鰻屋さんでいしさんの大好きな鰻を食べながら
彼女のお父さんやお母さんの話をしてくれたのです
八王子は紡績工場が林立する街だった
その紡績工場を経営していたのがお父さんだということを知る
何百人も女工さんを抱え、その一人一人の面倒を見ていたそうだ。
八王子祭りで登場する神輿はお父さんの寄付によると言われる
人望も財産もあるお父さんは
市内にあった遊郭に通っていたそうだ
相当もてていた当時、知り合ったある遊女との出会いに驚かされる
その遊女の名前を教えてくれる
なぜならその遊女のお墓を作ったのがお父さんだったから
お父さんは遊女が脳溢血で倒れた時
彼女を引き取って
家で看病したそうだ
その看護に愛情を注いだのが
当時幼かったいしさんとお母さんだった
えつ?お母さんが?
信じられなかった
今でなら浮気相手の面倒を見るなんて考えられないからだ
寝たきりのお妾さんのオムツまで交換していたそうだ
お母さんができないときは、幼いいしさんがやっていという
何度も何度も聞き直す
「本当ですか?」
「どうしてそこまでできるのですか」
「それほど母は父を心底愛していたのだと思う」
お母さんのお父さんに対する深い愛が
お妾さんの世話をすることにつながっていると言う
私は会うたびにその真意を探る
いつまでも納得できない
そのお妾さんが亡くなるまで続けたそうだ
そして今でもあるお妾さんのお墓
お母さんはいしさんにこう言ったそうだ
「いしや!私が死んだ後も、年に一回はお妾さんの墓参りを忘れないでね」
そう言ってお母さんは旅立って行った
「私は、そんな母との約束を守って、お妾さんの墓参りを年一遍
ちゃんと行ってますよ」
そう言って胸を張るいしさんからあるエピソードを聞く
「私は何回も母と父が重なっているのを見ています。
それほど2人は愛し合っていたのです」
そしてそのお母さんの写真を私に見せてくれるのです。
そこにはにこやかに微笑む姿
歳をとっていても気品溢れる笑顔
私にはマザーテレサのように輝いて見えました。
私は無宗教ですが、いしさん親子とお父さんお母さんが
人間愛を最後まで貫く姿に畏敬と感動を覚えたのです。
そしていしさんはある部分重なって見えたのでしょう
私達親子に愛を注いでくれたのだと
確信するのです
今でも人間愛とは、男女の愛とは
別次元のものではないか?
いや延長線上にあるのでは?
いしさんのことを思う度
私達は深〜く考えさせられるのです
きっと息子が、役者になったのは
様々な愛を掘り下げる旅に出ているのだと思っているのです
PS
「父さん!」たった一言ですが
そこには全てが凝縮されている
この映画も親子の愛を描いています
予告編を
https://m.youtube.com/watch?feature=youtu.be&v=Bb14EIvs-4g
いしさんに見せてあげたかった!
今月14日秋田の小さな小さな映画館(御成座)で上映されます