デイサービスを通して

お世話になった86歳の女性を

書き留めておきたい。

というのはその女性をよく乗せていた

飛鳥交通の運転手さんに、今日偶然に、乗り合わせたからだ。

86歳の女性は、デイサービスで知り合う。

同じ世代の女性と話を避けているようなので

私が興味を持っている政治や社会について話すと

貝殻のような口が開いて多弁になっていった。

女性同士の井戸端会議は大嫌いなことがわかる

くだらない話と愚痴を聞くことが大嫌いなようだった。

近くのデニーズで食事を重ねるうちに

 私の店に来るようになる

86年間生クリームが大嫌いで食べなかった事を聞く

「騙されたと思ってウチの生クリーム入りクレープを

食べてみてください」持って帰ってから

毎日タクシーで買いに来てくれるようになる

「どうしてここのクリームは食べれるのだろう」

「美味しい!素晴らしい!」と言って

毎日毎日タクシーで買いにきてくれるように

その時よく乗り合わせた運転手さんが今日の私の運転手さんだった。

「ここ2.3年見かけないので、どうしたのか知っていますか?」

「どうも認知症で施設に預けられてるようですよ!」

という悲しい結末に、毎月鰻屋さんでご馳走してくれた思い出が蘇る

彼女は浅川の近くの会社社長の奥さんだったこと

旦那さんは私と同じ脳溢血で亡くなったことを知る

長い間旦那さんに代わって会社を切り盛りしていたことを知る

その経営の中で旦那さんに愛人がいることがわかり

手切れ金(数百万)を持って行った話を聞く

そこでの修羅場をくぐり抜けてきた女性の逞しさが

旦那さんの最後に「涙ひとつでなかったです!」

「夫婦は所詮赤の他人です!」

強烈なメッセージを送られる

ご主人とはお見合いだったけれど、

本当に好きだった彼の思い出を語る彼女の目はいつも輝いていた。

おばあちゃんと言わず「86歳の彼女」と言ったのは

彼女が本当に愛した初恋の人に私が似ているということで

デートをしてくれたことが後になってわかったから

うなぎを食べた後、東急ストアーのエディーバウワーで

洋服を見立てて、私に買ってくれた思い出が鮮明に蘇る

「こうやって服を選んであげることが大好き!」

「これはどうかな?」

「それよりこっち方がいいわ!」

毎月一回そんな会話が約3年ぐらい続いただろうか。

途中から店で働くようになった息子も参戦するようになる。

足がおぼつかなくとも、優しくいつも手を添える息子に

   ギターを買ってくれたり、

確かジュノンボーイの最終舞台に出ることが決まった時

彼女は記念に

「君は必ず将来成功するよ!」と言って

ディールデザインの百合をモチーフにしたブレスレットをプレゼントしてくれる。

「百合は希望の花だから」

息子は今もそれを大切にしながら希望に向かってチャレンジしている
ある日彼女にどうしてそこまでしてくれるのか聞いてみた

突然彼女の口から出た遊郭の話が核心になっていることを知る。

ここからが彼女の壮絶な体験と重なる

話が長くなるので、大切な話はもう少し後にしたい。

なぜなら彼女は、認知症で家族のことや

私たちのことも忘れているに違いないから

あまりにも辛い

そんな現実を運転手さんから聞くことになろうとは

真実は

私に人生とは夫婦とは親子とはを

真っ直ぐに問いかけてくる

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