
100メートル決勝に入ってきた
池江瑠璃子選手の口元は
そう言っているように聞こえる
マスコミを見ると
確かに言っていたらしい
青春をかけていたオリンピック
戦場であったはずのプールに
そう言って入ったきた池江瑠璃子さんの心境
“疾風に勁草を知る”
「激しい風が吹いて初めて丈夫な草が見分けられる」
そしてバタフライに続いて
100自由形準決勝
前半の泳ぎはゆったりと
プールで泳げる喜びを噛み締めながら
君は泳いでいる
後半はその喜びを爆発させようと
僕も高校時代水泳部にいたので(ブラスバンドと
かけ持ち)
その気持ち痛いほどわかる
バタフライで代表に選ばれ
掴み取った自信は
喜びに変えて
前半を流しながら
プールに戻れた
その感覚を
確かめるように
次元の違う世界で
泳いでいるようだ
奈落の底に落とされて
白血病と戦う君は
フランス大会に目標を見据えて
闘いの中に光を見つけようとしていた
僕も脳出血で真っ暗闇の中を
もがいていた入院中の自分に重ねる
お店に復帰できる日を夢に見ながら
心の中で泣き叫び、もがく毎日
泳ぎ終わった君の頭に後光がさしている

まさかの東京五輪代表へ
バタフライだけでも充分
大好きな自由形決勝は
ひたむきに泳ぐだけ
楽しもう
心から
ひたむきに
自分を表現するだけ
結果はどうであれ
自由に
飛び立つ姿を
見てもらえれば
それだけで幸せ
オリンピック至上主義や、マスコミの取り上げ方に
疑問をぶつける論調もある
私はそうは思わない
たった1人でも水面で浮かんでいるだけで
水と一体になった幸せを体全体で感じ取れる心境は
金メダルより尊い至福の時の流れ
ただいまに込められた
人間 池江瑠璃子の第二の人生の始まりに
私は深くうなずいている
今日はその100メートル自由形決勝
ひたむきに泳いでる姿が見たい
只それだけ
一緒に泣いて

一緒に笑って

只それだけのためにオリンピックはあるのだから
あなたと人生を今を共有したいから
平井コーチは
「オリンピックと言われているが、まずは自分の体をしっかり見ながら日本選手権でほかの種目の王座も奪還できるように頑張ってほしい。その先に、オリンピックを含めた何かが待っていると思う。去年、会ったときに“病気になった後のほうが私は強くなっている”と話していたが、彼女の泳ぎや活躍が、病気に苦しんでいる人をはじめ多くの人たちに勇気を与えていると思う。璃花子らしい泳ぎでこれからも多くの人たちを笑顔にしてほしい」