再会は藪そばの味
「父さん 俺だよ!待った?
会いたかった!
きっとここにいると思ったよ!!
黙って旅立つなんて
ひどいじゃないか!
やっと会えたよ
あれから藪そばが焼けて
もうここで会えるとは思わなかったよ!」
「お前も片麻痺で
よくここまで立ち直れたなぁ!
なんでも継続は大切」
「父さんだって
旅立つまで
弁護士を続けたじゃないか!
俺もお店守るため
障害者になっても
自分で法廷に立ち
自分で答弁書書いて
親父に負けない法廷闘争をしたんだよ!
弁護士無しに闘ったんだよ!
車椅子で証人台に立ったんだよ!
病院から車椅子で法廷に
自分で主尋問、反対尋問して
判決を勝ち取ったんだ!
全て自分の手で
30年の暖簾を守ったんだ」
「良くやったよ!
さすがは、私の息子だ
さー食べよう
再会の味を
噛みしめよう」
「ありがとう!
父さんに褒められたくて
ここまで頑張れた」
「もうすぐ
俺も旅立つつもり
そっちへ行ったらゆっくり話そうね」
「慌てることないよ!
お前の息子も頑張ってるじゃないか!
しっかり見届けてからでも遅くはないよ
あの世に寿命はないんだから」
藪そばは父さんの味
父さん!
もう少し待っていて
やぶそば
前の店は昨年2月19日、漏電火災で半焼した。1923年建築の木造2階の数寄屋造りで、東京都選定歴史的建造物に指定されていた
今日は、
ニコライ堂を観て
観音坂を下り
薮そばで「せいろそば」をすする
父の法律事務所の近くで、大学も近くだったので、よく一緒に食べた薮そばの味が忘れられなくて、御茶ノ水で下りて、歩いて薮そばへ
ひょっとして、親父に会えるかも
そんな期待を胸に出かける
隣に座ったお父さん
谷中から一人で食べに来たという
私より年齢は下だけれど
私の好きなお寺の街
谷中からたった一人で来られたお父さん
何だか不思議な巡り会い
やっぱりこの世とあの世は
繋がってるんだ!
目頭が熱くなる
お父さんに感謝して
別れる
大学は、無くなっているけれど
ニコライ堂は、そのままの姿で
迎えてくれた
思い出がつながり
幸せな1日に感謝